東京高等裁判所 昭和29年(う)71号 判決
被告人 阿藤菊蔵
〔抄 録〕
論旨第二点について。
本件について逮捕状及び勾留状を発した清水簡易裁判所裁判官江国隆晴が本件被告事件の審理、判決をしたことは記録上明らかであり、刑事訴訟規則第百八十七条第一項及び第二項本文の趣旨から考えると起訴前に勾留の処分をした裁判官は原則としてはその事件について審判することができないと解すべきであるが、同条第二項但書によれば急速を要する場合又は同一の地に勾留の処分を請求すべき他の裁判所の裁判官がない場合には、事件の審判に関与すべき裁判官が自ら公訴提起後第一回の公判期日までの勾留に関する処分をすることができるのであつて、これを逆に言えば急速を要し又は同一の地に勾留の処分を請求すべき他の裁判所の裁判官がない場合には右の勾留処分をした裁判官が自ら事件の審判をすることができるのであるから、公訴提起前に勾留の処分をした裁判官は右と同様の理由がある場合は自ら事件の審判をすることができるものと解すべきである。而して清水簡易裁判所には裁判所は裁判官は簡易裁判所判事江国隆晴が在勤するのみで他の裁判官が在勤せず、また清水市には他の裁判所がないのであるから本件について勾留状を発した裁判官江国隆晴が事件について審理判決したことを以て法令により判決に関与することができない裁判官が判決に関与したとすることはできない。論旨は理由がない。